ニュース ニュース

ニュース

TOP > ニュース一覧 > 校長ブログ > はぎの通信 No.70(令和6年度 中越学園中越高等学校入学式 校長 式辞)
2024.04.09 校長ブログ

はぎの通信 No.70(令和6年度 中越学園中越高等学校入学式 校長 式辞)

 

はぎの通信 No.70 (R6. 4.9)

 

中越高等学校長 萩野 俊哉(はぎの・しゅんや)

 

令和6年度 中越学園中越高等学校入学式 校長 式辞(Entrance Ceremony Address

 

  昨日(4月8日)、353名の新入生を迎えての入学式を無事終えました。お陰様で、今年度も定員を超える1クラス増という形で多くの新入生を迎えることができました。皆、少し緊張の面持ちながら、立派に式に臨んでくれました。新入生の皆さん、中越高校へようこそ!心から歓迎いたします!

 

 今日のブログでは、その入学式での私の式辞を文字にして紹介します。よろしければお読みください。

 

式 辞

 

 暖冬小雪の冬が過ぎ、今まさに春の息吹が感じられる今日この頃、本日ここに、御来賓として、学校法人中越学園理事長の村山光博(むらやま・みつひろ)様を始めとする、各位の皆さまの御臨席を頂き、令和六年度、学校法人中越学園中越高等学校入学式を挙行できますことは、私達教職員にとりましても大きな喜びであり、ご参席いただきました御来賓の皆様並びに保護者の皆様に対しまして心から御礼を申し上げます。

 新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。皆さんの入学を心より歓迎いたします。

 さて、本校は、今年創立百十九年目を迎える歴史と伝統ある学校です。卒業生も三万人をゆうに超え、諸先輩方は各界においてその中枢及びリーダーとして活躍しておられます。本校の創立は明治三十八年(1905年)、当時小学校の校長であった齋藤由松(さいとう・よしまつ)先生が、生徒の女子師範学校への入学の困難さを見て、「自己の信ずる教育をするためには、自分の学校を持たねばならぬ」と、三十六歳にして校長を退職し、自ら「齋藤女学館」を設立しました。当初は、女子師範学校および高等女学校への入学希望者、さらに小学校教員検定受験者の予備教育を行う学校でした。本校の建学の精神は、この未来の子供たちを教育する地域のリーダーたる女性の先生の育成でありました。今現在では、私たちはこの建学の精神に基づいてさらにそれを広げ、高い志と夢を持って世界で活躍する人材やリーダーの育成を本校の教育の根本方針としております。

 現在の中越高等学校は、さらに次の三つのことを学校の教育理念として掲げています。一つ目は校訓です。その学校の教育の「背骨」となるものです。その本校の校訓は「質実剛健」。かざりけがなく、まじめで、強く、しっかりしていることです。二つ目は本校の校風、その学校の特徴を表すスクールカラーです。それは、「進取の精神」。過去にこだわらず、自ら意欲的に新しいことにチャレンジすることです。校風にはもう一つあって、それは「文武一如」(ぶんぶいちにょ)。文も武も根源においては一つである、具体的には学業と部活動、どちらも等しく大切にするということです。そして、最後の三つ目は本校の教育精神です。それは、まさに今このステージの私の頭上に掲げられている言葉「明るく 進取の精神、『若き今日 眉上げん』」であり、本校の恒久的なスクール・スローガンでもあります。この「眉上げん」は、本校の校歌の第一番の歌詞の一節(いっせつ)で、「顔を上げ、大空を見上げて、大きな希望を持って前に進もう」という意味です。

 今日は入学式。この中越高等学校の生徒として第一歩を踏み出す日です。その最初のスタートにあたり、本校の生徒として成長していく上で、ぜひ胸に刻んでおいていただきたいこととしてお話しいたしました。

 さて、今、私は「成長」と申し上げましたが、そもそも人間を成長させるものとは何でしょうか。私は、それは「欲求」だと思います。それも、動物的欲求ではなく、極めて人間的な欲求です。このことを説明するために、少し話を脱線して、ある行動学者の分類を引用してみましょう。

 旧約聖書にアダムとアブラハムという二人の人物が登場します。アダムは神が最初に作った人間で、誘惑に負けて禁断の木の実を食べ、エデンの園から追放されます。アブラハムはユダヤ民族の祖とされる人物で、神を信じ、安住の地を捨て苦難を乗り越えて約束の地カナンへたどり着きます。行動学者ハーズバーグは、アダムを動物の延長と見ます。環境に支配され受け身で生きる。その欲求は動物的です。一方のアブラハムは、人間的でありたいというやむにやまれぬ欲求を持ち、目標に向かって突き進み、悪循環を克服します。その欲求はすぐれて主体的で人間的です。人間は皆、環境が与える苦痛からいかに逃れるかを求めるアダム型動物的欲求と、自らに課題を与え、それを達成することに大きな喜びを見いだすアブラハム型人間的欲求の両面を持っていますが、そのどちらが優勢であるかによって幸不幸は決まる、とハーズバーグは言っています。

 この人間的欲求こそが成長を促す出発点ではないでしょうか。そして、これを満たすために積極的な意欲を持つことができれば、アブラハムのように生きられるでしょう。しかし、私がここで言いたいのは、その意欲は性格とは無関係であるということです。引っ込み思案な性格であるから積極的に行動できないと自分を納得させて、アダムのように受け身に消極的に生きることは、世の中から常に重荷を背負わされ、裏切られた感情を持つばかりで不満が多く幸少ない人生になってしまいます。積極的に行動するということは、目の前にあるいろいろな機会を、自ら求めて最大限に活用するということです。内気な人でも極めて積極的に生きられるのです。逆に、積極的な姿勢で内気さを克服することにもつながるでしょう。

積極的に生きることと消極的に生きることには大きな開きが生じます。「僕にはできないから」とか「私には無理だわ」などと消極的に逃げ回ることは、たとえて言えば下りのエスカレーターにしか乗っていないということです。そうではなく、自分には荷が勝ちすぎると感じられることに対しても、積極的に挑戦する意志があれば、乗り始めは多少ぐらついても、結局は上りのエスカレーターにしっかりと乗ることができるのです。積極的に生きること、できないと思えることにあえて挑んでみること、いや、自分には難しいと思えるからこそやってみること、それが人生に求めるものをどんどん大きく膨らませるのです。求めるものをかなえようとする人間的欲求によって、そして、それをひとつずつ達成することで成長があるのです。そして、この姿勢が幸福への可能性を広げていくのだと私は思います。

 結びに、保護者・ご家族の皆様に申し上げます。本日はお子様のご入学誠におめでとうございます。高等学校は人生の方向を決定する大事な時期であり、悩み苦しみも大きい時期でもあります。私達教職員は、お子様が自らの生きる道を自らが切り開いていけるよう全力を尽くして参りますが、生徒の成長は学校教育のみで図れるものではありません。まず、ご家庭での基本的生活習慣が確立され、そして、家庭・学校との相互の理解・信頼があってこそ達成されるものであります。連携を密にして取り組んでいくことが重要と思います。どうぞ、学校の方針をご理解いただき、格別のご支援とご協力を賜りたいと存じます。新入生の皆さんが、本校での生活で自らを磨き、輝き、大きく成長することを心から祈念して、式辞といたします。

 

令和六年四月八日

           学校法人中越学園 中越高等学校長 萩 野 俊 哉

 

以上