はぎの通信 No.153(屋久スギに学ぶ「体幹のある成長」)
はぎの通信 No. 153 (R8. 1.26)
中越高等学校長 萩野 俊哉(はぎの・しゅんや)
屋久スギに学ぶ「体幹のある成長」
(Learning from Yakusugi Cedar: "Growth with a Trunk")
皆さんは「屋久島」と聞いて、どんな島を思い浮かべるでしょうか。
屋久島は鹿児島県の南、九州の最南端に位置する島で、島の約9割が山と森に覆われています。標高2,000メートル近い山々が連なり、「一か月に35日雨が降る」と言われるほど雨の多い島としても知られています。その独特の自然環境が評価され、1993年には日本で初めて世界自然遺産に登録されました。
実はこの屋久島は、花崗岩でできた島です。土壌は浅く、栄養分も豊富とは言えません。植物にとっては決して育ちやすい環境ではありませんが、そうした過酷な条件の中で育ったのが、屋久島に自生するスギ、いわゆる屋久スギです。
屋久スギの年輪をよく見ると、驚くほど細かく、ぎゅっと詰まっています。成長はとてもゆっくりです。私たちがよく目にする植林のスギと比べれば、同じ高さに育つまでに何倍もの時間がかかります。しかし、その分、幹は太く、芯が強い。強風にも豪雨にも耐え、何百年、何千年と生き続ける力を身につけているのです。私はこの姿に、「体幹のある成長」という言葉を重ねずにはいられません。
今の社会は、結果を急ぎがちです。早く成果を出すこと、すぐに目に見える成長を示すことが評価されやすい時代でもあります。勉強も部活動も、「どれだけ早く」「どれだけ多く」が強調される場面があるでしょう。しかし、屋久スギが教えてくれるのは、成長の速さよりも、どんな年輪を刻んでいるか、ということです。
皆さん一人ひとりの高校生活も同じです。思うように成績が伸びないことがあるかもしれません。努力しても結果がすぐに出ず、焦りや不安を感じることもあるでしょう。しかし、その時間は決して無駄ではありません。試行錯誤し、悩み、踏ん張る中で、皆さんの内側には確実に「年輪」が刻まれています。それは、目には見えにくいかもしれませんが、将来、必ず皆さんを支える体幹になります。
中越高校は、皆さんがゆっくりでも確実に、自分の足で立てる力を育む場でありたいと考えています。人と比べて成長の速さを気にする必要はありません。大切なのは、与えられた環境の中で、自分なりに根を張り、学び続けることです。
屋久スギは、自分で環境を選べませんでした。それでも、その環境の中で最善を尽くし、強く、しなやかに育ちました。皆さんもまた、それぞれの場所で、それぞれの条件の中にいます。だからこそ、今この瞬間を大切にし、地道な努力を積み重ねてください。
ゆっくりでいい。年輪は、必ず力になります。
中越高校で刻む一日一日が、皆さんの未来を支える太い幹になることを、私は信じてい
ます。
以上