はぎの通信 No.149(本当のやさしさって何だろう)
はぎの通信 No. 149 (R7. 12.15)
中越高等学校長 萩野 俊哉(はぎの・しゅんや)
本当のやさしさって何だろう(What is true kindness?)
皆さんは、「本当のやさしさ」とはどんなものだと思いますか。やさしい言葉をかけること、困っている友達を助けること――どれも素敵な行動ですが、私は「本当のやさしさ」はもっと静かで、もっと相手の気持ちに寄り添ったものだと感じています。
例えば、ある日の放課後、廊下ですれ違った二人の生徒の姿が印象に残っています。一人は部活動の練習で疲れ切っているようでした。もう一人は友達に呼ばれたのか足早に教室へ向かおうとしていましたが、その疲れた友達の顔をちらりと見ると、立ち止まって「大丈夫?」とだけ声をかけ、少しだけ話を聞いてから教室へ向かっていきました。ほんの数十秒のやりとりでしたが、そこには相手を思う静かなやさしさが確かにありました。
やさしさは、いつも大きな行動として現れるわけではありません。むしろ、深い気づかいほど、表にはあまり出てこないものです。たとえば、落ち込んでいる友達に無理に励ましの言葉をかけず、そっと隣に座って一緒にいてあげること。あるいは、誰かが困っていそうなときに、相手の気持ちを考えて「手伝おうか?」と声をかけるタイミングを慎重に選ぶこと。こうした行動には、相手を観察し、相手の立場に立って考える力が必要です。そして、それこそが「本当のやさしさ」につながるのだと思います。
皆さんが日々過ごす学校生活には、こうした「やさしさの芽」があちこちにあります。しかし、慌ただしい毎日の中では、それらを見落としてしまうことも少なくありません。だからこそ、私は皆さんに伝えたいのです。どうか、周りの人の気持ちに目を向ける時間を、ほんの少しだけ増やしていただきたい。相手がどんな気持ちでいるのか、何を必要としているのかを考えてみていただきたい。その一歩が、きっと周りの景色を変えていきます。
「本当のやさしさ」は、派手ではありません。しかし、静かに誰かの心を支え、周囲の人たちを温かく包みます。そして、そのやさしさは、皆さん自身を強く、豊かにしてくれます。中越高校には、そのような温かなやさしさを持つ生徒がたくさんいます。皆さん一人ひとりの小さな行動が、学校全体の雰囲気や安心感を生み出しています。どうかこれからも、相手の気持ちにそっと寄り添い、さりげない一歩を踏み出せる人であってください。
皆さんの中にある「本当のやさしさ」が、これからも誰かの力となることを願っています。
以上