はぎの通信 No.139(前向きな言葉で未来をつくろう)
はぎの通信 No. 139 (R7. 10.6)
中越高等学校長 萩野 俊哉(はぎの・しゅんや)
前向きな言葉で未来をつくろう(Let's create a future with positive words!)
日本には古くから「言霊(ことだま)」という考え方があります。言葉には不思議な力が宿り、口にした言葉が現実に影響を及ぼす、というものです。単なる迷信と片づけることもできますが、私たちの心や行動に言葉が強い影響を与えることは、日常の中で多くの皆さんが実感されているのではないでしょうか。例えば、緊張しているときに「大丈夫」と自分に言い聞かせると、少し安心できることがあります。逆に「できない」「無理だ」と口にすると、本当に力が出なくなってしまうこともあります。
心理学の研究でも、言葉が人の感情や思考に大きく作用することは示されています。私たちが普段使う言葉は、他者へのメッセージであると同時に、自分自身の心にも響いています。だからこそ「言霊」という日本の考え方は、現代にも十分通じる知恵なのだと思います。
ここで大切なのは、私たちができる限りポジティブな言葉を選ぶことです。人間関係の中で、ネガティブな言葉は相手の心を傷つけるだけでなく、自分自身をも暗い気持ちにしてしまいます。反対に、前向きな言葉は相手を励まし、同時に自分の心にも活力を与えてくれます。例えば、「失敗したね」と言うよりも「次の挑戦につながるね」と伝えた方が、相手は勇気を持って再挑戦できるでしょう。
学校という場は、毎日が挑戦の連続です。生徒の皆さん一人ひとりが、学習や部活動、人間関係の中でさまざまな壁に直面します。そのときに先生や友人、そして家族からかけられる一言が、進む道を大きく左右します。励ましや共感の言葉があれば、困難を乗り越えようとする力になります。本校の教育が大切にしている「互いを尊重し、支え合う姿勢」は、まさに日々の言葉遣いから形づくられていくものです。
もちろん、すべてを前向きな言葉に置き換えることは容易ではありません。ときには厳しい指摘や冷静な評価も必要です。しかしその中でも、相手を否定するのではなく、未来に向けた建設的な表現を意識することは可能です。言葉をどう選ぶかは、その人の姿勢や品格を映し出します。
生徒の皆さんには、ぜひ言葉の持つ力を意識してほしいと思います。友人にかける一言、先生に返す一言、自分自身に語りかける一言。そのすべてに「言霊」が宿ります。ポジティブな言葉を選び取る習慣を身につけることは、これから社会に出てからも必ず役立ちます。
言葉は目に見えませんが、確実に人を動かす力を持っています。どうか日々の生活の中で、互いを支え合い、励まし合う「言霊」を大切にしていきましょう。
以上